二者択一の国民投票によって国家の行く末を決定して良いのか?

イギリスのEU離脱を巡る国民投票が23日夜(日本時間24日朝)に開票され、(法的拘束はないものの)EU離脱多数という結果に終わった。ここで考えたいのは、国家の重要な行く末を二者択一の直接選挙である国民投票の議題としても良いのかというものである。

今日、民主主義の国家は間接民主主義が中心である。これは国民が選挙によって議員を選出し、代表者である議員が国の政策の方針を話し合い決定するというものである。一方、今回の国民投票というものは国民が国の政策を直接選挙で決定する直接民主主義である。確かに、民主制確立の礎となったアテネ民主制の成立の過程においては、制限があったものの直接民主主義が始まりであった。しかし、他の要因も考えられるが、これは結局扇動政治家による衆愚政治により崩壊したともいえる。歴史は繰り返すというが、イギリスにおける今回の選挙もこれと同様なのではないか。

直接選挙ということは国民一人一人平等に国の行く末を決定するという裁量権が委ねられていることである。つまり、その時の国民感情によって左右されてしまうことも意味する。国の政策は今回のEU脱退も含めて長期的な視点で考えなければならない議題が数多いと考えられる。それを感情という一過性のものに委ねられて良かったのか。個人的には、長期的な視野で考えなければならないからこそ、二者択一の国民投票ではなく専門家である議員や有識者の意見を交えてじっくりと議論をすすめ決定するべきであったと思う。議員はこれを考えることが仕事であるし、有識者はこういう時のために日々自分の専門分野を研究しているはずである。

最後に、もちろんだが国民が衆愚だから選挙などせずに勝手に決定しろということを言いたいのではない。今回のように国家の重要な岐路を二者択一にして選挙することは必要ないということである。私たち有権者は国の様々な方針を個人的な価値観と照らし合わせて、それを実現してくれる議員に投票するべきである。

今回のBREXITによってどのようにイギリスが変容していくのか、日本を含めた世界の影響も注視していきたい。